ブラックボックス
サブプライム問題は様々な要因が複合的にからみあって生まれたものだ。しかし、その中で最も重要なものは何か、と問われればそれは「ブラックボックス」だと答えたい。
もしも世の中が完全に効率的に回っているとすれば、誰も超過利潤を得られないということになる。例えば、どこかで通常よりも安い値段でモノが売られているとしたら、裁定取引によってそれは直ちに普通の値段に戻されるはずだからだ。しかし、現実には、地球は広いし、資源は限られるし、人智には限界があるので、それが教科書通りに完璧に機能することはない。海外でモノを買い付けてそれを日本で売る、ということだけでも結構儲けているような会社が結構あるのは、それを示している。
しかし、技術の進歩、グローバリゼーション、通信手段の発達、規制緩和・・・により、ある種の商品の売買は非常に効率的になり、そこで儲けをとるのが非常に難しくなった。例えば、投資家がソニーや任天堂などの株式の売買で超過利潤を得ることは事実上不可能。投資家が、流動性の高い株式や国債などを売買している限り、人並み以上のパフォーマンスを上げることはできない。
このところ投資銀行にとって環境はどんどん厳しくなってきた。まず、証券の売買手数料が自由化された。ネット証券会社の台頭なども相まって、売買手数料の儲けが激減した。次に、株式や債券などの自己売買も、市場環境が整えば整うほど、儲けるのが難しくなってきた。さらに引受業務や投資銀行業務なども、利益率に対する下方圧力が徐々に増えているという点では変わりない。このまま、技術革新と規制緩和が進んでいくと、市場は非常に効率的になり、投資銀行としてはにっちもさっちも行かない状況になるのではないかとみられた。「金融のグーグル化」これが金融機関が最も恐れることだ。
そこで投資銀行が考えたのが「ブラックボックス」を作る、ということだ。つまり、モノの売買をするのに、非効率な部分を大きくするということ。そうすれば、部外者にはその適正価格がわからなくなるので、ビッドとオファーの差が大きくなり、儲けやすくなる。いわば「任天堂株式の売買」方式から「骨董の売買」方式に変える、ということだ。
サブプライムで駆使されたのがOTC(相対取引の)デリバティブである。デリバティブといっても色々ある。国債の先物やFXなどは非常に効率的になっており、株式の売買と変わるところがない。しかし、OTCの場合は、売り手と買い手の合意のみにより取引が成立するので、外部からは見えにくい。住宅ローンを証券化(MBS)したら、その後はそれをOTCデリバティブ(CDO)によってさらに見えにくくする。さらにCDOのCDOとか、CDOのCDOのCDOとかを作る。それでもまだ足りないということで、サービサー、SIV、格付け会社、モノライン保険会社・・・をまぶす。これでブラックボックスの完成だ。皆で儲けを分けあおう!
勿論、これはリスクが高いやり方だ。でも、赤信号を皆で渡れば・・・みたいな感じになっていた面は否定できない。また、大きく儲けてボーナスをいっぱいもらえば後は野となれ山となれ、ということもある。いやはやモラルは一体どこへ行ってしまったか・・・。
では、今日はこの辺で。
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