FDICベア総裁の信条
今発売中のエコノミストに掲題の記事を書きました。短くて軽めの内容ですが、アメリカの預金保険制度の説明も織り込みました。是非ご一読ください。
「マネーの虎」の最新号を書きました。こちらです。
字数の問題もあり、内容的に今ひとつ書ききれていないかもしれません。これから本ブログでも銀行の自己資本の問題についてふれていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
私が力説したいのは、今ある危機管理システムではだめだということです。十分な自己資本があるはずの生命保険会社が突然逝ってしまう。また十分な自己資本比率があるとして政府からお墨付きを与えられている銀行や協同金融組織について公的資金導入の話が出たり・・・というおかしなことが起きています。生保がつぶれた原因が、情報の隠蔽や虚偽によるものならば経営陣を糾弾すべきですし、そうでなければ当局の責任問題となるべきでしょう。
何事もうやむやにするのが得意な日本人ですが、この問題はうやむやにすべきではありません。
では。
不動産関係の友人からこんなメールが来ました。ご本人の了解を得て以下添付いたします。
QUOTE
鹿島などが、業績の下方修正を発表して売り込まれてます。
たしか5月頃だったと思いますが、JPモルガンが、ゼネコンの発注者への資材値上がりコスト転化が進むなど
どとして、アウトルックを格上げし、ゼネコンは大手四社を中心に買われていました。
小生は不思議で仕方ありませんでした。
つまり、工事の発注者たるデベロッパー(小生もそのうちの一人です)は、不動産開発の採算が軒並み悪化し
て、工事発注取りやめが続いているのに、「なぜコスト転化できるのか?」と。
やはり、と思わざるを得ません。
証券会社の株式調査部って、一体どんな調査をしてるんですかねぇ。
UNQUOTE
もっともな疑問です。証券会社の株式調査部なんて大したものではありません。野口悠紀雄先生がどこかの週刊誌で「エコノミストの予測は競馬の予想屋並み」と書かれているようですが、競馬の予想屋にもまっとうな人がたくさんいるのに失礼だ、というのは無しにすると(笑)、これはなかなか良いポイントをついているんです。そしてそれはまたまたタレブの「ブラック・スワン」と関係しています。
以下、少し書いてみます。競馬の予想屋にしても株式アナリストやエコノミストにしても、将来を予測するには森羅万象というかマクロ的事象を把握しなければなりません。例えば建設会社の将来の株価を予測するには、その建設会社の分析をする必要があるのは勿論のこと、業界の知識から不動産市況、建材の市況、地方経済、金利、為替レート、人口推移、世界経済・・・という風に無数の要素の関係を知る必要がある。競馬の予想にしても、株よりは条件がややシンプルだとしても、馬の状態以外の数多くの要素が関連することに変わりありません。
しかし、株式アナリストはせいぜい業界の専門家、そうでなければ数字を適当にあやつって株価を(神頼みで)「当てにいっている」だけにすぎません。一方「競馬の予想屋」については良く知りませんが、株式アナリストよりは不確定要因が少なそうなのである程度当たるようにもおもえますが、それでも大して当てられないのではないかと思います。エコノミストは「経済」という最も複雑な事象を追っているので、多分一番当たらないでしょう。十年後の経済成長率なんて絶対わかるはずがない。
ですから、私としては、アナリストに株価を予想させようというのがそもそも無理だと思うのです。会社なり業界なりを調査・分析する専門家には存在意義がありますが、それを「株価の予測」と直接結びつけようとするのがおかしい。このところの株安では「ほとんどの銘柄の株価が下がっていくだろう」と言っていた人以外は大はずれの状況ですよね。でも、これはコツコツと当該業界の分析だけをやっていては絶対得られない結論です。
世界は一つ。その大きな流れの把握こそがアナリスト・エコノミストに要求されることなのでしょう。(前にも似たようなことを書いているかもしれませんが、重要なことは何度でも書かせてください。)
今発売中の週刊エコノミスト10/28号にエコノミスト編集部さんと共同で記事を書きました。
前半部分についてはこちらで読むことができます。よろしかったら是非お読みください。それ以外については恐縮ですが、本誌をごらんいただければ幸いです。
刻一刻と状況が変わっていく中でこのような記事をまとめるには色んな苦労がありました。結局使われなかった原稿がどれほどあったことか(苦笑)
一方で良かったのは、今の時代はネットにさえ接続していれば欧米の雑誌・新聞・ブログなどに自由に目を通せるし、テレビ番組もかなり観られること。日本にいても情報の格差を感じることが少なくなったのは本当にありがたいことです。
それにしても昨今のマーケットの状況を見ていると、日本の株式市場も世界のマクロ的な動きにもろに影響されていることが再確認されます。だから日本株のアナリストというのは何よりも世界経済を良く理解していることが必要というわけでしょう。
では。
競馬の秋華賞でリーマン・ブラザーズ出身で現在無職の方がオーナーの馬が優勝した、という日刊スポーツの記事。三位も元リーマンだそうです。
ご同慶の至りですが、オーナーになるのにどれくらいカネを払ったのか、そして今回いくらくらい儲かったのか、などなど興味は尽きません・・・・。
では。
S&L危機
米国では1980年代から1990年代前半にかけて747のS&L(総資産の合計は3940億ドル(39.4兆円))が破綻した。投入された税金はおよそ1246億ドル(12.46兆円)とされる。
原因
1)不動産などへの乱脈融資
2)LBOやジャンクボンドなどへの投資
3)インフレ時代の終焉
4)ブローカーから多額の預金を購入したりして調達コストが上がった
5)当局の検査体制の不備
6)過小資本
7)詐欺やインサイダー取引などの不正融資(犯罪)
1985年までに多くのS&Lが実質的に破綻。オハイオとメリーランドで取り付け騒ぎが起きた。政府はS&Lの預金を保証していたが、その負担で預金保険制度が破綻してしまった。そこでRTC(整理信託公社)が設立された。(1989に設立、1995に解散)初年度に一万人を雇い入れたほどの大掛かりな動きだった。
方法
S&Lが破綻すると当局はRTCをレシーバーとして任命する。
RTCはS&Lの資産を清算する。その時、民間のパートナーを入れたことが成功の一因。高いインセンティブをもって資産の処分が可能となった。
(RTCはS&Lが潰れたあとに資産を購入するため、「適正価格」の問題は生じない。)
結論
基本的に成功した。今般も「RTCを復活させろ!」という声があがっているほど。
でもこれは非常に小さい金融機関の処理であったことは忘れてはならない。
それに、こんなに小さい金融機関でも12.5兆円を使った。今般の米銀に対する資本注入の合計はその倍の25兆円に過ぎない。「それで足りるの?」と疑問が出るのもわかる。S&L747行の資産の合計が40兆円弱、それに対してJPモルガンの総資産は(一行で)225兆円也!
では。
やっと少し落ち着いてきたのでまた書き出します。
今日はFDIC(米預金保険機構)のお話です。FDICの長官のシーラ・ベアはアメリカで最も権力がある女性として知られています。世界でみても、フォーブズ誌のThe 100 Most Powerful Womenという記事で、ドイツのメルケル首相に次いで堂々の二位となっています。 ということはライス(米国務長官)やヌーイ(ペプシコCEO)やフェルナンデス(アルゼンチン大統領)よりも高位にいるわけですね。
さて、昨今の金融危機のおかげで預金保険の役割が非常になってきました。そのさなかに、ベア女史が「市場や銀行ばかりではなく、住宅ローンの借り手である個人を直接支援するような法案が必要だ」と言ったのです。確かに現在一番困っているのは住宅ローンに苦しむ個人であり、税金を個人ではなくゴールドマン・サックスやシティバンクのために使うのはおかしい、という疑問はうなずけるところがあります。
ちなみにアメリカでは住宅ローンはノンリコース(家を返せば返済となるタイプのローン)なので、日本に比べると借り手の負担は比較的軽く、逆に、銀行の負担が比較的重くなります。家の価値が下がったら、家をあきらめるという選択肢が借り手にはあるのです。(これについてもう少し詳しくお知りになりたい方はコチラをご参照ください。)
それでも、個人の重圧は大変なものだし、個人を助けるのが預金保険の第一の使命。もっと個人に目を向けよ、というのがベアの主張。ごもっともです。(こういうことを言う日本の政治家や役人は少ないんですよね!)
ノンリコースローンではない日本では、バブル崩壊後に庶民が被った被害はアメリカよりずっと深刻であったはず、と私は考えています。
あ、結局持論のノンリコース住宅ローンキャンペーンになっちゃいましたか?スミマセン!
ではまた。
追記
先週末のエコノミスト誌を遅ればせながら読んだら、シーラ・ベアについての良い記事があるのを発見。フォーブズのランキングについても触れられています。
かなり忙しい日々が続いているため、なかなか更新ができない状態です。すみません。
ロイターに面白い記事がありました。eBay(ご存知世界一のオークションサイト、日本ではヤフーオークションに敗れましたが)にアイスランドが売りに出ているとのこと。このサイトには「オークションで勝った方には、北大西洋の端にあるアイスランドをさしあげます。居住可能な環境、アイスランドの馬、そしてご存知のように若干不安定な金融の状況がセットです」とあるそうで、質問には「地震・火山保険はつくのか?」といったものが書かれているそうです。
で、早速eBayで検索しましたが、それらしきものは見つかりませんでした。ひょっとしてもう売れちゃったのかも!?
土曜日の今日は書店でサーモンピンクのファイナンシャル・タイムズ紙を久しぶりに購入した。どうせウェブで読めるのだが、紙の新聞を広げると普段は読まない色んな記事が目に入ってくるので新鮮だ。今週号では「新宿伊勢丹のメンズ館は紳士用品を買うのに単一の店舗としては世界トップの一つである」との記事や、85歳の母親をつれて日本を旅した人(アメリカ人)の話など、日本関係でもいくつか興味深い記事があった。
でも、今はとりあえず備忘録として金融危機の記事を続けなければ・・・。
今日はヨーロッパの銀行の問題の記事を取り上げよう。
http://www.ft.com/cms/s/0/9e0152dc-91ac-11dd-b5cd-0000779fd18c.html
長文だが味わいのある内容だ。以下、部分的に引用および大意を載せます。
Europe's governments have shown they can move with impressive speed and efficiency to rescue failing banks with cross-border operations such as Fortis and Dexia. Europe's patchwork system of regulators and financial authorities may not work elegantly in theory, but it has been shown to work effectively in practice.
ヨーロッパ各国政府はフォルティスやデクシアのような国境をまたがる銀行を救済した。そのすばやい行動は大したもの。国ごとに異なる金融システムはうまく働かないとみられていたが、実際はとても効率的に機能した。
He also warns that the financial crisis's impact on Europe could be proportionately bigger and longer-lasting than on the US. European banks, he says, play a more central role in their economy than do banks in the US, where many "non-bank" financial institutions offer credit.
金融危機の影響はアメリカよりもヨーロッパのほうが大きくまた長期間に及ぶ可能性がある。ヨーロッパの銀行は経済で中心的な働きをしているが、アメリカでは多数のノンバンクも与信を行なっている。
The lack of a unified regulatory structure and a co-ordinated European response has led some governments to act unilaterally to protect their banks, even at the risk of infuriating their neighbours and distorting the single market. Britain has fiercely criticised Ireland's guarantee for the debts and deposits of its six largest banks.
ヨーロッパには統一的な規制や協調した対応は存在しない。そのため政府によっては自国の銀行を守るために単独の行動をとるところがある。そうすることで隣国の怒りを買ったり単一市場を揺るがすことになる恐れがあってもだ。アイルランド政府が六大銀行の預金と負債を保証したことはイギリスの大いなる怒りを買った。
他にも興味深い内容が詰まっているが、今日のところはこの辺にしておこう。
またまた怖いルービニ大先生のご宣託です。日本の金融機関にも関係する後半部分について大意(意訳)を添えてご紹介します。
After the bust of Bear and Lehman, and the merger of Merrill with Bank of America (nyse: BAC - news - people ), I suggested that Morgan Stanley and Goldman Sachs should also merge with a large financial institution that has a large base of insured deposits so as to avoid a run on their overnight liabilities. Instead, Morgan and Goldman took a cosmetic approach, converting themselves into bank holding companies as a way to get further liquidity support--and regulation as banks--from the Fed and as a way to acquire safe deposits.
モルガンスタンレーとゴールドマンサックスは大銀行と合併させるべき、と私は言ってきた。でもこの二社は見かけだけの処理つまり普通銀行への転換ですませようとしている。
But neither institution can create, in a short time, a franchise of branches, and neither one has the time and resources to acquire smaller banks. And the injection of $8 billion of Japanese capital into Morgan and $5 billion of capital from Warren Buffett into Goldman is a drop in the ocean, as both institutions need much more capital.
でもこの二社が今すぐに支店網を築いたり小さな銀行を買収できるわけではない。モルガンへの日本からの80億ドルの出資とウォーレン・バフェットによるゴールドマンへの50億ドルの出資は大海の一滴である。この二社はもっとずっと巨額の資本を必要としている。
Thus, the gambit of converting into banks while not being banks yet hasn't worked, and the run against them has accelerated in the last week: Morgan's CDS spread went through the roof on Friday to over 1200, and the firm has already lost over a third of its hedge-fund clients together with the highly profitable prime brokering business (this is really a kiss of death for Morgan). And the coming roll-off of the interbank lines to Morgan would seal its collapse. Even Goldman Sachs is under severe stress: Most of its lines of business (including trading) are now losing money.
だから普通銀行への転換は効果を見せていない。むしろ先週になって顧客の逃げ足が早くなっている。モルガンのCDSスプレッドは1200bptを超え、収益力の高いプライムブローカレージ業務とともにヘッジファンドの客の三分の一以上を失った。(そして次のインターバンクのラインの書き換えの時にとうとうその日がくる・・・)ゴールドマンだって大半の業務(トレーディングを含む)で損をしている。
Both institutions should stop playing for time, as delay will be destructive: They should merge now with a large foreign financial institution, as no U.S. institution is sound enough and large enough to be a solid merger partner. If John Mack and Lloyd Blankfein don't want to end up like Richard Fuld, they should do a John Thain today and merge as fast as they can with other large commercial banks. Maybe Mitsubishi (other-otc: MSBHY.PK - news - people ) and a bunch of Japanese life insurers can take over Morgan.
時間稼ぎをさらに続けたら破滅的だ。アメリカ以外の大手銀行と合併させるしかない。二社のCEOがリチャード・フルド(リーマンの最後のCEO)みたいになりたくなければジョン・セイン(メリルの最後のCEO)のようにすべき。多分三菱か日本の生保の一群がモルスタを乗っ取れるかもね。
The only institution sound enough to swallow Goldman may be HSBC (nyse: HBC - news - people ). Or maybe Nomura in Japan should make a bid for Goldman. Either way, Mack and Blankfein should sell at a major discount before they end up like Bear and are offered, in a few weeks, only a couple of bucks a share for their faltering operation. And the Fed and Treasury should tell them to hurry up, as they are both much bigger than Bear or Lehman, and their collapse would have severe systemic effects.
ゴールドマンを飲み込めるだけの安定性を有する会社はHSBCだけだろう。あるいは日本のノムラがゴールドマンの入札に手を挙げるべきかもしれない。どちらにせよ、GSとMSのCEOはベアスターンズみたいに二、三週間後に株価が2,3ドルになったりする状況を避けたければ相当に値引きして売るしかない。だから連銀と財務省は早くするようにせっつかないといけない。ベアスターンズやリーマンよりずっと大きい会社がこけたらシステミックリスクは計り知れない。
今回の7000億ドルの提案がアメリカ経済の生死を決める分水嶺だとおもっている向きが多いようだが、そんなことはない。
まず、その提案を読んで理解したか、ということがある。長いし複雑。専門家でも咀嚼するのが大変なのに、素人の議員が短期間で理解できるはずがない。
それからその内容の問題。政府が銀行に直接支援するための政策としては大きくいうと不良債権買取か銀行への資本注入、のどちらかしかない。そしてその優劣については、多数の学者や専門家がウェブ等でオープンな議論をしている(それがアメリカの素晴らしいところでもある)が、私の見方としては、とにかく銀行を早く立ち直らせることが第一目的であるのならば資本注入をするべきだとおもう。
不良資産買取というのは問題に直接切り込んでいく点で優れているが、複雑で時間がかかる。そして買い取り価格の設定が難しい。
ちなみに資産買取と資本注入を組み合わせると以下のような効果がある。
資産を安く買った場合 納税者は得・銀行は損 その後の株価の下落では納税者は損
資産を高く買った場合 納税者は損・銀行は得 その後の株価の上昇では納税者は得
実際には対象債権の多くはトリプルA格だと見られるので、市場が正常化すればかなり価格が上昇するとみられるが、どうだろう・・・。
さて、この提案が下院で否決されたことで「この世の終わり」みたいに騒いでいる人が多いが、もう少し時間をかけて検討して良いはずだ。住宅金融システムはファニーメイとフレディーマックの救済でひとまず正常化した。投資銀行もまずまず落ち着いた。もちろん商業銀行への支援は流動性の供給等できっちりしておく必要があるが、何しろ巨額な投資である。英知を結集して良い案を通して欲しい。
さらに言うと、私としてはこのようなバブルの再発を避ける手立てを考えてもらいたいとおもう。すぐには無理かもしれないが、以下のような政策を望みたい。
1)過去の正規分布をベースにした(甘い)将来予測手法を変える。
2)従業員・役員の報酬・ボーナス体系を見直す。具体的には、長期的な視野に立つ、リスクを十分に考慮する・・・等々。
3)景気サイクルと逆の規制を取り入れて、ビルト・イン・スタビライザー的効果を持たせるようにする。例えば不動産や株価の一本調子の上昇等の場合に、自己資本比率の下限が高くなるように設定する、等々。(これはまだ考えがまとまらないので、もうすこしお待ちください。)
では。
What We Have Here Is A Failure To Communicate
What We Have Here Is A Failure To Communicate
今回の7000億ドルの提案が否決されたのはPRが下手だったから、という説。ユニークな見解だが、一理あると思う。ポールソンが一人でしゃべっていると、どうしてもウォール街というかゴールドマン・サックスの代弁者みたいに
見られる。この提案が経済全体に必要、というのならば他の経済閣僚(商務長官ら)にも話させるべきだった。また、ウォール街以外の人にも説明する機会があるべきだった・・・という内容。
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